なりたいものも、やりたいことも、特になかったから [生活]

ようやくぼくのほうが慣れてカタチになってきたところで、啓が興奮しつつ言った。光は、ほんとうにうれしそうにきらきらと笑っていた。「楽しい」って、やっぱりこういう感じなのかな。ふたりを見て、そう思った。そして、やっぱりそれはぼくにとってとても遠いものだということを確信した。それなのに。気がつけば、ぼくはふたりと目一杯に楽しむ自分を卑怯にも演じていた。

教室中から「ええ~」と、気だるそうな声が響いた。中学二年の春だった。担任の先生は、その年度から異動してきた、陸上部の新しい顧問だった。ぼくはなにを描いてよいのかわからずに、ただ手をこまねかせていた。そんなぼくに、その先生が言ったのだった。そう言われても、ぼくにはなにを描けばよいのかわからなかった。なりたいものも、やりたいことも、特になかったから。

それでも、なにかを書かなければならない。だからぼくは、オリンピックのマラソンで金メダルを獲る絵を描いた。先生の顔を見て、ふと同じ部の女子がそう語っていたのを思い出したからだった。そうして、なんの意志もない空っぽのその絵が、ぼくの将来の「夢」になった。それがよっぽどうれしかったのか、先生はぼくの「夢」をみんなの前で発表してから、こんなことを言った。

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